【連載】 徹底解説!令和2年度 診療報酬改定 | 第9回:もうひとつのプロジェクト、オンライン資格確認
こんにちは、華です。
新型コロナウイルスの感染拡大対策として、電話及びオンラインでの診療が暫定的に初診時より認められることになりました。
そのため、現在「オンライン診療」に注目が集まっていますが、同じく政府が進めるオンライン化プロジェクトに関して皆さんに知っていただきたいことがあります。
それは、「オンライン資格確認」です。
今回は、そのオンライン資格確認について解説します。
この記事の目次
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オンライン資格確認とは?
オンライン資格確認とは、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号などを用いて、オンラインで資格情報(保険の有効期限など)を確認できる仕組みのことです。
2019年5月22日に公布された「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」において、マイナンバーカードを健康保険証(国民健康保険被保険者証及び後期高齢者医療被保険者証を含む)として利用できるようになり、2021年3月には「オンライン資格確認」が開始されることとなりました。
また、2019年6月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2019」において、「2022年度中におおむね全ての医療機関等での導入を目指し、医療機関等の読み取り端末、システム等の早期整備を十分に支援する」としています。
「医療機関・薬局向けオンライン資格確認導入の手引き」(2020/4/6)<厚生労働省>より引用
オンライン資格確認のメリット
オンライン資格確認が導入されると、医療機関等の窓口でただちに資格確認ができるようになり、「失効した健康保険証による過誤請求」の減少が期待できます。
保険証を月が替わるごとに、毎回確認していますが、それがシステムで自動化されるようになります。「保険証を目視で確認したものの実は失効していた」なんてことがなくなるのです。
また、マイナンバーカードには顔写真が入っていますので、それを活用することで、医療機関において診療時における被保険者の確実な本人確認が可能になります。現在の保険証には顔写真もありませんし、マイナンバーカードにある利用者証明用電子証明書もありませんので、これで「なりすまし」や「保険証の友人間の譲渡」といった問題も解決しますね。
さらに、転職などで保険者が変わっても新しい保険者が資格情報を登録することで、新たな健康保険証の発行を待たずに保険医療機関等で受診できるようになります。保険証の切り替わりによる、確認ミスや登録ミスも防ぐことが可能になるのです。
オンライン資格確認等システムを通じて、患者本人の同意の下、医療機関・薬局において過去の「服薬履歴」や「特定健診情報」の閲覧が可能となり、より多くの情報のもとに診療や服薬管理が可能となります。これはマイナポータルと呼ばれる、日本版PHR(パーソナルヘルスレコード:個人の医療データを一元的に管理する)構想の軸となる仕組みです。
新型コロナウイルスの件で、初診時から可能になった電話およびオンライン診療でも、この保険証の確認は大きな問題となっていますが、スキャナやスマホのカメラなどを利用して、保険証を読み取れれば、遠隔で資格確認が可能になるのです。
医療情報化支援基金
今回の「オンライン資格確認」の開始に向けて、医療機関や薬局の初期導入にかかる費用を支援するため、「医療情報化支援基金」が社会保険支払基金(以下、支払基金)に設置されました。
この医療情報化支援基金を作るにあたり、「令和元年度医療提供体制設備整備交付金(オンライン資格確認導入支援事業)実施要領」が定められ、同実施要領において、オンライン資格確認の開始に向けた保険医療機関等のシステム整備にかかる費用の補助率や補助限度額等を定めています。
「医療機関・薬局向けオンライン資格確認導入の手引き」によると、顔認証付きカードリーダーについては、今国会で提出予定の「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」が成立することにより、支払基金で一括調達し、医療機関および薬局に無料配布する予定となっています。(「医療機関・薬局向けオンライン資格確認導入の手引き」では、まだ法案が通っていないため、現行法の条件による補助として示されています。)
また、「マイナンバーカードの読取・資格確認等のソフトウェア・機器の導入」や「ネットワーク環境の整備」「レセコン、電子カルテ等の既存システムの改修」などの費用は、上限額と割合で補助すると記載されています。
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今後のスケジュール
オンライン資格確認や特定健診情報の閲覧は「2021年3月」から、薬剤情報の閲覧は「2021年10月」から開始される予定です。
医療機関と薬局での初期導入経費(システム改修等)については、医療情報化支援基金による補助金を活用できます。支払基金が2020年6月頃に開設予定の医療機関・薬局向け専用ポータルサイトにて、顔認証付きカードリーダーの申込、オンライン資格確認等システムの利用申請および医療情報化支援基金の補助申請の受付を行うことを予定しています。
また、具体的な補助申請手続き等については、4月以降に支払基金より全医療機関等に周知することを予定しています。(新型コロナウイルスの影響で、遅れる可能性があります。)
「医療機関・薬局向けオンライン資格確認導入の手引き」(2020/4/6)<厚生労働省>より引用
最後に
政府が進める「オンライン資格確認」は、全ての医療機関に関わることですので、情報提供させていただきました。
今回、始まった「初診からのオンライン診療」でも、患者の本人確認や保険証の確認は、以下のようにかなり煩雑なものになっています。煩雑であればあるほど、間違いの原因となり、非効率となってしまいます。
新型コロナウイルスの影響もありますが、医療現場の負担軽減のためにも、速やかに進んで欲しいプロジェクトです。
被保険者の確認等の手続について
電話や情報通信機器を用いて診療を行う場合においては、窓口での被保険者の確認等の手続きが行われず、また、診療も問診と視診に限定されていることなどから、対面で診療を行う場合と比べて、患者の身元の確認や心身の状態に関する情報を得ることが困難であり、患者のなりすましの防止や虚偽の申告による処方を防止する観点から、以下の措置を講じること。
・視覚の情報を含む情報通信手段を用いて診療を行う場合は、患者については被保険者証により受給資格を、医師については顔写真付きの身分証明書により本人確認を、互いに行うこと。その際、医師にあっては医師の資格を有していることを証明することが望ましい。
・電話を用いて診療を行う場合は、当該患者の被保険者証の写しをファクシミリで医療機関に送付する、被保険者証を撮影した写真の電子データを電子メールに添付して医療機関に送付する等により、受給資格の確認を行うこと。
・電話を用いて診療を行う場合であって、上記に示す方法による本人確認が困難な患者についても、電話により氏名、生年月日、連絡先(電話番号、住所、勤務先等)に加え、保険者名、保険者番号、記号、番号等の被保険者証の券面記載事項を確認することで診療を行うこととしても差し支えないこと。
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新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて(2020/4/10)<厚生労働省>より引用
次回は最終回になりますので、これまでのまとめとして「診療報酬改定と新型コロナ対策、そしてICT活用」をお送りします。
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ブログ記事は掲載時点(2020年4月)における情報をもとに執筆しており、著者の意見や経験に基づく内容を含んでいます。掲載している情報の正確性について万全を期しておりますが、その内容について保証するものではありません。
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