catch-img

【連載】 華と学ぶやさしい医療ICT | 第8回:「ソフト」と「ハード」を分けて考える

医療情報システムを勉強していくと、どうしても苦手意識が出てしまうのが「価格」ではないでしょうか。


電子カルテやレセコン、PACSなど医療情報システムの見積書ってわかりにくいですよね。各部門から見積書が出てきて、それに全部目を通す作業。考えただけで眩暈がします。しかし、これはIT担当者として、避けては通れない道(業務)です。苦手では済まされないのです。


たとえば、総額1億円の見積りを提示されて、それをひとつひとつ読み解くのに、結構な時間がかかります。


それはなぜか。


システムベンダーがサーバやパソコンなどの「ハード」と「ソフトウェア」を組み合わせて、一緒に提示していることが原因であるように感じます。

そこで、今回は「システムの価格」についてお話ししたいと思います。





システムの価格




そもそも医療情報システムの価格は、サーバやパソコン、ルータ、プリンターなどの「ハード代」と電子カルテシステムなどの「ソフトライセンス代」と、それを導入する際にかかるカスタマイズ、セッティング、そして研修にかかるコストである「導入・研修費」、日々の故障時や不具合時のサポートや診療報酬改定時にかかる改定コストの組み合わせである「保守費」から構成されています。これらの費用の総額がシステムの価格となります。

つまり、


「ハード代」+「ソフトライセンス代」+「導入・研修費」+「保守費」=システム価格


となるのです。



イニシャルコストとランニングコスト


これらの価格をわかりやすく分解するため、「イニシャルコスト(初期費用)」と「ランニングコスト(継続費用)」の大きく2つに分けることが長らく行われてきました。殆どの見積書は2つに分けて書かれています。


「イニシャルコスト」は、ハード、ソフトライセンス、オプション・連携(外部システムとの連携費)、導入・研修の費用を総額したコストとなります。

一方、「ランニングコスト」は、保守にかかるコストとなります。保守にはハードの保守とソフトの保守が分かれて書かれています。


通常は「イニシャルコスト」が一括表示、「ランニングコスト」は月額表示と、一見分かりにくい仕組みとなっています。そこで、ランニングコストを一般的なシステムの耐用年数である5年間(60ヵ月)で計算して、イニシャルコストとランニングコストを合算して考えると分かりやすいでしょう。



クラウドにより価格の把握方法にも変化が


2010年の医療分野のクラウド解禁以来、クラウドタイプの医療情報システムが増えてきました。その結果、価格の考え方にも変化が見られます。


クラウドタイプの医療情報システムは、全体のコストをランニングコストとしてとらえることが多く、ソフトライセンス代がイニシャルコストに計上されずに、保守料と合わせて「利用料」として提示され、ランニングコストに計上されることが多くあります。(これをサブスクリプション方式なんて呼ぶこともあります。)

そのため、イニシャルコストは低く、ランニングコストが高くなる傾向にあります。


そのため、クラウドタイプのシステムと院内サーバ(オンプレミス)タイプのシステムの価格比較が難しくなっているように感じます。






ソフトとハードを分けて考える




そこで新しい分け方として、「ソフト」と「ハード」を区別して把握する方法が考えられます。

その背景には、クラウドタイプのシステムベンダーは、ソフトとハードを一式に提供することはせずに、ハードは医療機関が別途調達しても良いとするケースが出てきているためです。ソフトとハードを分けることで、より透明性の高い価格形態となっているように感じます。


クライアント端末は、設置台数によって価格が変わってきますので、重要となるのが「端末は何台必要か」という問いです。この台数については、事前調査時と実際の購入台数の間に違いが発生することがよくあるようです。この差によって、価格が最終的に変わってしまいます。

基本調査の段階では、必要な最低台数で考えると共に、台数が1台増えることで、いくら増加するのか(端末当たりの価格)を明らかにしておく必要があるのです。


また、ハードを考えるうえで、「モニタサイズ」やノートパソコン、デスクトップ、スマートデバイスといった「端末タイプ」、そして使用想定年数による「サーバの容量」、クラウド型(クラウドコンピューティングを利用しサービス提供企業側にサーバを設置する)か、オンプレミス型かといった「サーバタイプ」も考慮しなければなりません。

さらに付け加えるのであれば、「プリンター」についても、しっかりと必要台数を考えておくことをお勧めします。




「ハード」と「ソフト」を分けて考える場合、「プライベートクラウド」が有効です。次回、「プライベートクラウド」についてご説明します。


さて、残り2回となりました…。寂しいです。

次回も是非、ご覧ください。


★今後の予定★
(第1回)医療ICTの歴史
(第2回)医療情報の標準化
(第3回)プラットフォームという考え方
(第4回)画像・検査の管理
(第5回)データを経営に活かす
(第6回)クラウド社会とリスク対策
(第7回)効率的なシステム構築
(第8回)「ソフト」と「ハード」を分けて考える
(第9回)プライベートクラウド
(最終回)AI・RPAの医療における可能性


facebook
twitter
ページトップへ戻る