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【連載】 徹底解説!令和2年度 診療報酬改定 | 第6回:医師事務作業補助者の評価

こんにちは、華です。


わが国では、少子高齢化の影響から「今後の労働人口の減少」を見据えて、政府主導のもと「働き方改革」が急速に進められています。その一環として、「残業時間の短縮」というチャレンジが行われており、例外なく医療機関でも残業減少の試みが進められています。


しかしながら、単に「残業」を減らそうとしても、すぐに減るものではありません。残業の減少は結果であって、そのための手段となる「生産性向上」が必要と言えるでしょう。





働き方改革の評価




今回の改定では、初めて「働き方改革」を進めることに対しての評価が行われています。具体的には、

  • タスクシフティング・タスクシェアリング
  • ICTの活用

についての評価です。


中でも、これまでも進められてきた医師の事務業務を「医師事務作業補助者(以後、医療クラーク)」に、看護師のケア業務の一部を「看護助手」に移行する動きが進められています。


これまで診療報酬改定では、医師および医療従事者のタスクシフティングを支援する観点から、加算が設けられています。医療クラークの配置を評価した点数である「医師事務作業補助体制加算」は、12年前に新設されました。

相次ぐ点数の引き上げや対象範囲の拡大などもあり、順調に算定医療機関が増えており、2018年には2,828軒(全病院の約3割)の病院で導入されています。


病院では、医師の隣に事務スタッフ(医療クラーク)が配置される体制が一般的になりつつあると言えるでしょう。


※医師事務作業補助者の「延べ勤務時間数の8割以上の時間」において、医師事務作業補助の業務が病棟又は外来において行われている場合、加算1となり、それ以外は加算2となります。

中央社会保険医療協議会総会(2019/09/25)≪厚生労働省≫より引用




医師事務作業補助者体制加算の変更点

今改定では、医師の働き方改革を推進し、質の高い診療を提供する観点から、医師事務作業補助体制加算について算定可能な病棟が拡大されました。

今回算定が可能になったのは、以下の通りです。


  • 回復期リハビリテーション病棟入院料(療養病棟)
  • 地域包括ケア病棟入院料/入院医療管理料(療養病棟)
  • 結核病棟入院基本料
  • 有床診療所入院基本料
  • 有床診療所療養病床入院基本料
  • 精神療養病棟入院料


これにより、急性期・回復期・慢性期、そして病床を有する診療所にまで算定範囲が拡大されました。また、評価の見直しも行われ、全ての点数が一律50点の引上げが行われています。


医療クラークの配置が、勤務医の負担軽減に高い効果があるとの評価が行われたことになります。




改定前
改定後
医師事務作業補助体制加算1
15対1補助体制加算
920点
970点

20対1補助体制加算
708点
758点

25対1補助体制加算
580点
630点


30対1補助体制加算
495点

545点


40対1補助体制加算
405点

455点


50対1補助体制加算
325点
375点

75対1補助体制加算
245点
295点

100対1補助体制加算
198点
248点
医師事務作業補助体制加算2
15対1補助体制加算
860点
910点

20対1補助体制加算
660点
710点

25対1補助体制加算
540点
590点

30対1補助体制加算
460点
510点

40対1補助体制加算
380点
430点

50対1補助体制加算
305点
355点

75対1補助体制加算
230点
280点

100対1補助体制加算
188点
238点

中央社会保険医療協議会総会(2020/02/07)≪厚生労働省≫より引用




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医師事務作業補助体制加算の算定に向けて

医療クラークが代行できる業務とは、どのようなものでしょうか。

医療クラークの業務は、医師の指示のもと


  1. 診断書などの文書作成補助
  2. 診療記録への代行入力
  3. 医療の質の向上に資する事務作業(診療に関するデータ整理、院内がん登録等の統計・調査、医師等の教育や研修・カンファレンスのための準備作業等)
  4. 行政上の業務(救急医療情報システムへの入力、感染症サーベイランス事業に係る入力等)


の対応が例示されています。


一方、医療クラークができない業務としては、


  1. 医師以外の職種の指示のもとに行う業務、診療報酬の請求事務(DPCのコーディングに係る業務を含む)
  2. 窓口・受付業務
  3. 医療機関の経営、運営のためのデータ収集業務
  4. 看護業務の補助並びに物品運搬業務等


が挙げられています。


つまり、医療クラークは受付・会計業務や看護師のサポート業務は兼務できないことになります。


また、医療クラークの配置に対して、「職員研修」が算定要件で定められています。具体的には、「配置から6か月間は研修期間として、業務内容について必要な研修を行うこと。なお、6か月の研修期間内に32時間以上の研修(医師事務作業補助者としての業務を行いながらの職場内研修を含む)を実施するものとし、当該医師事務作業補助者には実際に病院勤務医の負担軽減に資する業務を行わせるものであること」としています。

具体的な研修項目は以下の通りです。


  • 医師法、医療法、薬事法、健康保険法等の関連法規の概要
  • 個人情報の保護に関する事項
  • 当該医療機関で提供される一般的な医療内容及び各配置部門における医療内容や用語等
  • 診療録等の記載・管理及び代筆、代行入力
  • 電子カルテシステム(オーダリングシステムを含む)






まとめ




今改定では、「働き方改革」に関する評価が強く打ち出されました。中でも、勤務医の負担軽減を目的にした「医療クラーク」の配置は、政府の積極的な推進もあり、今後病院そして有床診療所で普及していくことが予想されます。

医療機関の電子カルテの導入などICT化計画を進める上で、システムの導入に合わせて医療クラークの配置についても検討してはいかがでしょうか。




次回は、2020年度診療報酬改定における「外来医療の評価」について解説します。



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ブログ記事は掲載時点(2020年3月)における情報をもとに執筆しており、著者の意見や経験に基づく内容を含んでいます。掲載している情報の正確性について万全を期しておりますが、その内容について保証するものではありません。


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