【連載】華と学ぶやさしい医療ICT | 第4回:検査・画像の管理
みなさん、「RIS」って知っていますか。「リス」と読みますが、動物のリスとは違います。
RISとは、Radiology Information Systemの頭文字をとった医療IT用語で、日本語に訳すと放射線情報システムのことです。もう一つ似た言葉に、「HIS」(ヒス)という言葉があります。HISとは、Hospital Information Systemの頭文字をとった医療IT用語で、日本語に訳すと病院情報システムのことです。このRISとHISの関係を中心に、今回は「検査・画像の管理」について考えてみます。この項では、様々な略語が出てきますので、その都度解説していきますね。
診療報酬では「検査」と「画像診断」に分かれている
ところで、診療報酬の点数本で検査や画像のページを開いてみると、「第3部検査」に、血液検査や生化学検査、生体検査(超音波、心電図、内視鏡など)などがまとめられており、「第4部画像診断」にレントゲン(一般撮影)、CT、MRIなどがまとめて掲載されています。
わたしたちはこれら全部を簡単に「検査」と呼んでしまいがちですが、診療報酬では大きく2つに区分されています。そのことから、一般的な病院は、この区分に沿って検査部門と放射線部門に分けていますし、そこで働く方々の職種も、放射線技師と臨床検査技師と名称が異なっていますね。ちょっと前にTVでやっていた「ラジエーションハウス」は、その名の通り、放射線部門のお話でした。
RISとPACSの関係
病院のIT化を考えるとき、まっさきに頭に浮かぶのが電子カルテですが、先ほど挙げたRIS、そしてPACS(パックス)も真っ先に検討されるシステムです。
あ、新しい略語が出てきましたね。PACSとは、Picture Archiving and Communication Systemsの頭文字をとった医療IT用語です。日本語に訳すと画像をアーカイブしてコミュニケーションするシステムですから、医用画像管理システムと訳されます。RISが放射線部門全体のシステムを指すのですが、電子カルテやオーダリングなどのHISから、オーダーされた放射線部門への撮影依頼をRISが一旦受け、その情報をもとにCTやMRI、レントゲンなどモダリティ(画像診断装置)に情報連携し、各モダリティで撮影された画像はPACSで管理されることになります。
このように、検査・放射線部門のIT化とは、それぞれの検査装置(モダリティ)ごとに、「どのように検査装置にオーダー」し、「どのように検査結果を返す」かの仕組みを構築するかを考えることなのです。また、モダリティによって、接続するインターフェイスが異なり、また出力されるデータも、数値データや画像データがあり、特に画像データはDICOMで出力できるものと、DICOMで出力できないものがあり、注意が必要です。DICOMは第2回でも出てきましたね。Digital Imaging and Communications in Medicineの略で、CRやCT、MRI、内視鏡・超音波などの検査画像機器と医用画像システム、医療情報システムなどの間でデジタル画像データや関連する診療データを通信したり、保存したりする方法を定めた国際標準規格です。
近年、このPACSとRISは統合が進んでおり、両方の機能を兼ね備えた統合型のシステムが存在します。また、そのシステムには放射線部門で日々作成される報告書(レポート)を作成、管理する機能も備わっています。メーカーによって、PACSの中に含まれていたり、PACSとRISが分かれていたりと、一見複雑に感じるところです。それぞれのシステムがどこまで範囲をカバーしているかを確認する必要があります。
また、MRIやCT、PETなどの撮影装置が年々高度化され、それに伴い一度に撮影できる枚数も増加の一途をたどっています。つまり、撮影装置が良くなると、高画質の撮影できるようになり、病変の見落としがなくなる一方で、画像の容量が増えていくことにもなるのです。さらには、医用画像は、時間を追って確認していく必要があることなどから、長期的に管理することを前提とされており、ディスクストレージの容量をしっかりと確保しなければいけません。
ディスクストレージ製品も日々進歩しており、重複排除/圧縮機能で、保存されるデータを元のデータの1/2にする製品が出てきました。これを利用すれば増え続ける医用画像を効率よく管理することができます。 もちろん稼働実績99.9999% 以上という信頼性も確保しつつ、金額帯はミドルレンジになりますので、ご興味があればこちらのページも見てくださいね。
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検査部門システムの仕組み
「検査部門」では、日々様々な検査が行われています。具体的な検査には、血液、生化学、血清、一般、細菌、病理、生理などがあり、それらの検査部門で行われる検査ごとにデータを管理する機能と、検査室への依頼(オーダー)・検査結果データを一元管理する機能を保有するシステムを構築する必要があります。
これらの検査は、病院内で行えるもの、外注検査センターに依頼するものがあり、この両方を管理する必要があります。
また、検査を受け付けるためには、電子カルテやオーダリングとの連携、患者情報を取り込むための医事システムとの連携が必要となります。さらには、検体の取り間違いの防止のために、バーコードラベルを発行する機能も必要です。
一方、生体検査についても、心電図(ECG)、超音波(エコー)、血液ガス、内視鏡(ファイバー)などがあり、それらの検査機器から出力されるデータ管理する機能と、検査室への依頼・検査結果データを一元管理する機能が必要となります。
このように検査部門では、
- 検査機器との接続
- 電子カルテや医事会計との情報連携
- 検査結果の取り込み・閲覧
- レポート作成
- バーコードラベルの発行
などを、どのように総合的にシステム設計を行うかが重要なポイントになります。
「検査部門」と「放射線部門」のシステムを統合して時系列で結果表示
このように、様々な検査や画像などの情報を、いちいち確認するのは大変です。当然、一元的に閲覧したいというニーズが出てきます。それに答えるべく「検査部門」と「放射線部門」の部門データを統合的に管理できるシステムが開発されています。
2つの部門システムの情報を統合化するメリットは、患者ごとに、検査・画像情報が一画面上で参照可能な点です。時系列で全てのデータを表示することにより、各部門検査の相対関係も把握でき、過去データも時系列で閲覧できるため、医師による指示やレポートの作成をスムーズに行うことが可能です。また、検査部門・放射線部門の状況が一目で分かるので、院内全体の状況がリアルタイムに判断できます。
第4回は「画像・検査の管理」についてご説明しました。少し長くなってしまいましたね。最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
次回は、「データを経営に活かす」についてお伝えします。
★今後の予定★
(第1回)医療ICTの歴史
(第2回)医療情報の標準化
(第3回)プラットフォームという考え方
(第4回)画像・検査の管理
(第5回)データを経営に活かす
(第6回)クラウド社会とリスク対策
(第7回)効率的なシステム構築
(第8回)「ソフト」と「ハード」を分けて考える
(第9回)プライベートクラウド
(最終回)AI・RPAの医療における可能性