ATSは、愛知県教育情報通信ネットワークの最新化を含め、愛知県教育委員会における様々なプロジェクトに携わってきた。自治体や教育委員会へのMicrosoft 365やMicrosoftセキュリティソリューションの導入でも豊富な実績がある。
「人手を介さずに報告書を自動生成することが目標です。これにより、電話相談の正確な記録を残しながら、相談員がより親身な相談に力を注げるようにしたいと考えました」と立木氏は話す。
ATSの提案は、MicrosoftのAIテクノロジーを統合的に活用して高精度の「音声認識・文書作成システム」を構築するというものだった。電話を受けた相談員が、メモを取り、報告書を作成する流れをどのようにデジタル化するのか。ATS 社会公共事業部 自治体文教技術グループ 構築チームの古城隼氏は次のように説明する。
「まず固定電話での通話内容をデジタル録音し、そこからAzure AI Speechが文字起こしをして、Azure OpenAIが文書の整形、要約、定型書式への落とし込みまでを一気通貫で実行します。愛知県様ではMicrosoftの製品やテクノロジーを幅広く利用されており、アカウント管理の一元化が可能なことなどメリットが大きいと考えました。ATS社内にはMicrosoftテクノロジーに精通した技術者が多数在籍していますので、安心してお任せいただくことができます」
立木氏は、「ATSの提案は、シンプルかつ合理的に私たちのやりたいことを具現化するものでした」と話しつつ次のように続けた。
「私たちの業務に特化した機能に絞り込んだことで、投資対効果の観点でも満足できるシステム構築が可能でした。また、録音データを学習データとして使わない、クラウド上に処理済みのデータを残さない、という要件も満たしています」
音声認識から文字起こしの精度、要約生成の精度を高めるために、テスト用の音声データを使った検証が繰り返された。ATSのエンジニアチームは、追加学習やRAGを用いることなくプロンプトの工夫だけで推論の精度を高めていった。
「結果として、家庭教育コーディネーターが満足できる品質の報告書を、自動的に作成できる環境を整えることができました。2025年12月より本番利用を開始しており、実際の評価はこれからではありますが、家庭教育相談電話チームの生産性は劇的に向上することは間違いないでしょう」と田島氏は話す。
生成AIによる報告書の自動作成により、相談員の業務負担を大幅に軽減し、より親身な相談に力を注いでもらいたい、という目標は達成が見えてきた。
「この先は、デジタル化された相談記録を有効活用していく段階に入っていきます。家庭教育相談電話チームでは、月ごと季節ごとの相談内容の分析をもとに、相談対応の質を高めていく取り組みを開始しました。また、あいちの学び推進課でデジタルデータを効果的に共有し、新しいチャレンジにつなげていくことを検討中です」と田島氏は抱負を示す。
立木氏は、「教育委員会が獲得した情報や知見を、適切に学校教育の現場に提供していくことが重要だと考えています。教職員の方々に、これまでなかった新しい気づきを提供できるかもしれません」と話した。
愛知県では、Microsoft Copilotを全職員が利用できる環境が整えられており、様々な業務への適用に向けて模索が始まっている。立木氏は次のように結んだ。
「AIが職員一人ひとりの生産性向上に貢献してくれる可能性を日々実感しています。AIが創造する新しい価値を、チームや部門レベル、あるいは全庁レベルで享受するには、私たちが明確なビジョンと戦略を描き、それを一緒に具現化してくれるパートナーが不可欠です。プロジェクトを支援してくれたATSには、手探り状態の私たちに寄り添って、私たちの構想を理想に近い形で具現化してもらえたことに感謝しています」