ハイパーコンバージドは完璧な解決策なのか?

各社製品の機能と特徴を探る

コンバージドシステムやハイパーコンバージドシステムは、IT 環境をシンプルにしてパフォーマンスを向上する。
本稿では自社のデータセンターにハイパーコンバージドインフラ(HCI*)が適切かどうか判断する方法を紹介する。
*Hyper-Converged Infrastructureの略

仮想デスクトップの一元管理に変革


コンバージドインフラは、さまざまなテクノロジーのプラットフォームを 1 つの最適化したシステムにまとめたものだ。このアーキテクチャが誇る高いレベルのパフォーマンスは、特筆すべきメリットの 1 つだろう。しかし、それは企業にとって何を意味するのだろうか。そして、コンバージドインフラテクノロジーはいつ導入すべきなのだろうか。

まず、コンバージドインフラという名称に関する問題がある。ストレージメーカーは、ストレージアレイに加えて一定のコンピューティング機能のある製品を対象とするために「コンバージドインフラ」というシンプルな名称を使う傾向がある。だが、Microsoft の「Microsoft Exchange Server」や SAP の製品など、一般的なワークロードを実行するのに十分なコンピューティング機能がないシンプルなコンバージドインフラプラットフォームには、データ圧縮や重複解除、バックアップ、スナップショットなど、アレイ周りのインテリジェンスを実行できる程度のコンピューティング機能しか備わっていない。

他のベンダーはこの状況を次の段階に推し進めている。ここで登場するのがHCIシステムだ。 HCIは、コンピューティング、ストレージ、ネットワークを備えた完全なシステムで、この 3 つの要素が最高のパフォーマンスを実現するためにまとめて設計されている。

HCI市場に早くから参入していた企業には、Scale Computing、Nutanix、SimpliVity、Pivot3 などがある。なお、SimpliVity は 2017 年 1 月に Hewlett Packard Enterprise (HPE)によって買収されている。さらに、Dell、Lenovo、HUAWEI、Cisco Systems といった大手企業も商機を逃していない。Dell はハイパーコンバージドシステムのシャシー「FX2」を提供しているだけでなく、EMC の買収により同社のHCIである「VCE VxRack」を獲得している。HPE は SimpliVity を買収する前から、自前のハイパーコンバージドシステムを持っていた。それから、Cisco Systems には独自の統合コンピューティングシステムがある。それ以外のベンダーはパートナーシップを結び、各社の認定サーバ、ストレージ製品、ネットワークアーキテクチャが Pivot3 や SimpliVity などが開発したソフトウェアに対応するようにしている。


流行の最先端


安価で標準化された IT 設備が簡単に手に入るようになった今、なぜコンバージドインフラテクノロジーを求めるのだろうか。
最も重要なのは、標準化によって各種 IT 設備への接続が容易になることではなく、技術的に達成できる忠実度の度合いだ。C 社のネットワークを経由して、A 社のサーバを B 社のストレージアレイに取り付けることは可能である。だが、各段階で標準化の度合いについて妥協しなければならない可能性がある。

コンバージドインフラでは、あらゆる要素を高い次元でまとめることができる。コンバージドインフラの構造はよく知られており、コンピューティング、ネットワーク、ストレージのリソースは密接に設計され、最大限のパフォーマンスを発揮するようになっている。 このシナリオは、複雑なインストールや保守の負担から解放されたいと考えている企業にとって魅力的だ。 HCIシステムの設置作業は、開封して電源に接続し、基本情報を幾つか入力すれば完了する。なぜなら、HCIは運用中のプラットフォームの監視と保守を行うシステム管理機能を備えた、完全なシステムだからだ。 状況の変化に迅速に対応しなければならない企業にとって、この手早さは大きな違いをもたらす可能性がある。 ほとんどのHCIシステムは、クラウドコンピューティングにも最適化されている。HCIが機能する仕組みにおいて重要なのは、複数のワークロードの間でリソースを共有することだ。 そのため、クラウドを利用しないHCIのシャシーは無価値といっても過言ではない。そのような場合は、Oracle や HPE などのスケールアップした大型サーバを運用した方が良いだろう。 優れたHCIシステムを導入した企業は、組み込みのリソース管理とワークロードのオーケストレーションによって、クラウド環境の設計方法を細部まで理解しなくてもクラウドコンピューティングに移行することができる。


機能と制限


ここまでの内容を踏まえると、コンバージドインフラは、IT にまつわるあらゆる問題への完璧な解決策であるように思えるかもしれない。だが、そうではない。このように高次元でまとまったプラットフォームは、特定のワークロードに固有のものである傾向が強い。例えば、仮想デスクトップインフラとトランザクションベースの Eコマースアプリケーションを同じコンバージドインフラで同時に実行しようとしても、うまくいかない可能性が高い。1 つのシステムには類似したワークロードを配置し、他のワークロードには他のシステムを使用するのが最適だ。

コンバージドインフラテクノロジーには、1 つのリソースを拡大できない点にも悩まされているものもある。オーバースペックのシステムでストレージが不足すると、追加のコンピューティングリソースとネットワークリソースが不要な場合でも、不要なリソースが付属した新たなシステムを購入する必要が生じる可能性がある。さらに、同じベンダーから特殊なハードウェアを購入しなければならない場合もあるため、ベンダーロックインに注意が必要だ。リソースごとに必要なものを追加できるシステムを選ぶことをお勧めしたい。

ただし、全体的に見れば、コンバージドインフラは合理的である。企業は、コンバージドインフラに組み込まれているストレージシステムだけではなく、完全なコンバージドインフラに目を向けるのが賢明だろう。そうすれば、プラットフォーム全体を十分に最適化できるようになるからだ。

HCIシステムの可能性


HCIシステムは、一元管理されたデスクトップの提供といったタスクに特に秀でている。このアイデアを Citrix が初めて打ち出して以来、バックエンドアーキテクチャで複数のデスクトップ PC を実行することは IT チームにとって重い負担となっていた。HCIでは、大量のデスクトップ PC の供給を保証すること以外であれば、あらゆることに対応できる完全なセットアップが提供される。アプリケーションの階層化やインテリジェントなデスクトップといった高度なデスクトップのアプローチと組み合わせれば、HCIは一元管理されたデスクトップのプロビジョニングに変革をもたらすことができるだろう。

さらに、HCIは VM やコンテナの実行にも適している。ただし、ワークロード全体の特性が似ていることが条件となる。柔軟なリソースとオーケストレーション機能が組み込まれているため、HCIは上述のような調整済みのワークロードを展開および管理するための堅牢なプラットフォームになる。ただし、ワークロードのニーズが大きく異なると、ソフトウェアが規定のサービスレベルの範囲で効率的にオーケストレーションを管理するのが困難になったり、不可能になったりすることもある。

単純なコンバージドインフラテクノロジーにも役目はある。コンバージドインフラ製品は、以前なら個別に階層化する必要のあった大量のソフトウェア機能を追加で組み込み、ストレージアレイの効率を大幅に高めている。
既存のサーバとネットワークプラットフォームと一緒にストレージをアップグレードしたい企業には、コンバージドインフラが大きな付加価値をもたらすだろう。ただし、ストレージは、コンバージドインフラを構成する 3 つの柱(ストレージ、CPU、ネットワーク)の 1 本でしかないことに留意されたい。ハイパーコンバージド製品は、統合シナリオでより多くの価値をもたらす可能性がある。


タイミングを見極める


ハイパーコンバージドインフラ(HCI)やコンバージドインフラに移行する最適なタイミングを見極めるのは難しく、判断に関わる要素は企業によって異なる。それでも、このタイミングが適切だという重要な指標が 2 つある。 1 つは、新しいシステムが必要になったときだ。コンバージドインフラ製品やHCI製品を追加することで、可能な限り短時間で新しいプラットフォームを立ち上げて稼働させることができる。

もう 1 つは、既存のシステムを見直す必要が生じたときだ。企業は合意されたライフサイクルに基づいて IT 設備を運用する必要がある。こうすることで、古いプラットフォームの問題が事業を妨げることを回避できる。そのような設備が見直しの候補として浮上したら、より統合の進んだプラットフォームを検討するのが合理的といえる。そのような状況で最適な解がHCIだ。

コンバージドインフラは主流のテクノロジーになりつつある。企業はコンバージドインフラの使用を検討すべきだが、やみくもに使用してはならない。リソースを継続的にスケールアウトできる柔軟性を重視し、そのような柔軟性を提供することへの意欲が見られないベンダーには注意した方が良い。


記載の内容は個別に明記された場合を除き2017年7月現在のものです。

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