自治体クラウドとは?(後編)
自治体クラウドの対象となるシステムや検討体制、導入までの流れを説明します。
自治体のシステムにはどのようなものがあるか?
自治体の業務システムには住民の管理や地方税、福祉など法律に関わるものからGIS(地理情報システム)やサービス基盤、教育、防災、被災者台帳など様々なシステムがあります。
総務省では自治体システムの標準化を総務省事業として策定し、2019年時点では、住民基本台帳、個人住民税など27業務の情報システムについて標準化を定め(防災、教育等の基幹系以外の業務を含めると32業務)、全国地域情報化推進協会を通して公開しています。
下図のような多様なシステムをクラウドを通してサービスとして利用(住民に提供)できている状態がまずは目標となります。
どのように自治体クラウド化してゆくのか?
自治体クラウドは、一般的には利用中のシステムの保守切れやリプレースのタイミングでクラウドへの移行(サービス利用型モデルへの変更)を進めてゆきます。自治体クラウドへの移行は大きくは3つのステップを経て実現してゆきます。
Step1:標準化の検討 | |
クラウドへの移行にあたり、基本方針などの事前検討や計画立案、共通検討事項(非機能要件*、SLA)を決めてゆきます。 |
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Step2:自治体クラウド(単独クラウド) | |
できるだけ標準仕様に従ってシステムを導入し(ノンカスタマイズのシステム導入促進) 、業務プロセスの見直しやAI・ロボティクス等の導入を促進し業務を適正化してゆきます。主要な自治体の業務システムは、アプリケーションベンダーなどにより標準仕様を満たす内容となって単体パッケージや複数業務をひとつにまとめたオールインワンパッケージなどで提供されています。 |
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Step3:自治体クラウド(共同利用) | |
業務プロセスやサービスの標準化が進むことにより、自治体間連携やサービス基盤の共同利用へ進みます。 システムの運用方法も共同化・共通化することにより利便性・効率性が改善し、サービス向上に向けた領域に集中して人的・財政的資源を投資できるようになります。 |
Topics 非機能要件とは?
「非機能要件」とは業務の手順などといったシステムの機能以外に関する要件で、システムの安定・安全な稼動のために必要な要件のことです。クラウドの普及や災害対策の必要性が再認識されている中で、情報システムがどのような環境下で利用されるかを想定して、非機能要求を適切に設定することがますます重要になってきています。
自治体クラウドの検討においては、利用者とサービス提供者間の認識の相違を防ぎ、システムや機能要件の検討を円滑にすすめるために共通検討事項としてはやい段階で方針を決めてゆきます。
非機能要件6つの項目
可用性 / 性能・拡張性 / 運用・保守性 / 移行性 / セキュリティ / システム環境・エコロジー
非機能要件の例
「レスポンスは3秒以内にしてほしい」…性能
「将来の処理量増大に備え、2倍の性能に拡張できるようにしてほしい」 …拡張性
「システムダウン時は3時間以内に復旧してほしい」 …可用性
「業務時間中はシステムの質問に答えてくれる担当者がいてほしい」 …保守性
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)非機能要求グレード2018 (www.ipa.go.jp/sec/softwareengineering/std/ent03-b.html)
自治体クラウドの推進体制
自治体クラウドの検討にあたっては、通常は全体を統括する本部を設け、CIO(最高情報責任者)が設置されます。
本部の配下でシステムや業務ユニットごとに分かれて検討やプロジェクトを進めてゆきます。
CIOは市区町村長や副市区町村長が役割を担う場合が多く、日々のプロジェクトの統括は「CIO補佐官」がサポートする立場で進めてゆきます。(総務省、CIO・CIO補佐官の現状 www.soumu.go.jp/main_content/000601051.pdf )
CIO補佐官は、ITに関する専門的な知見・経験・実績をもち専門的・技術的見地からの支援等を行います。
政府組織をはじめ自治体の多くは高度な専門性をもったICT人材が不足しているため、AIなどの最新技術の知見を有し、プロジェクト管理のスキルを持つ外部の有識者を「CIO補佐官」として登用する場合があります。
自治体におけるクラウド化を導入している団体は増えてきているものの、共同利用や月額料金などサービスとして利用できている団体は多くはありません。
アルファテック・ソリューションズはクラウド利用やその後の共同利用を見据えてインフラの企画・構築から運用まで一貫したサービス・サポートを提供しています。
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