自治体クラウドとは?(前編)
「自治体クラウド」は一般的なプライベートクラウドとどのように異なるのか、自治体クラウドの背景・基本情報についておさらいします。
「スマート自治体」構想
日本の人口減少は大きな社会問題となっており、労働力の確保やデジタル活用が課題となっています。人口減少によって大きな影響を受けているものには、地方(地方自治体)があります。
総務省では生産年齢人口が減少し、高齢者人口がピークを迎える2040年頃をターゲットに、システムやAI等の技術を駆使して効果的・効率的に行政サービスを提供する「スマート自治体」を実現すべき姿として掲げており、それに向けてさまざまな取組みを推進しています。
スマート自治体:3つの原則
スマート自治体へ向け、3つの原則が掲げられています。
原則1:行政手続を紙から電子へ | |
電子化・ペーパーレス化ができており、紙の書類作成・確認・データ入力業務が効率化されるとともに、AIやロボットによる人為的ミスを防ぎます。 |
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原則2:行政アプリケーションを自前調達式からサービス利用式へ | |
「自前調達方式」とは、システムやアプリケーションを自治体ごとに所有する方式です。自治体ごとにシステムを持つ場合は、サーバーを冗長構成にしたり、5~7年ごとに買い換えるなど、調達だけでなく保守にも人的・金銭的コストがかかります。「サービス利用型」とは、サーバーなどのハードウェアを所有することなく、利用料を支払うかたちで利用する方式です。アプリケーションを動かすサーバーやネットワークはサービス提供会社が管理するため、利用者である自治体は老朽化による交換や故障対応、データバックアップなどの業務にかかる負担が軽減されます。 |
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原則3:自治体もベンダーも、守りの分野から攻めの分野へ | |
AIやロボティクスなどのICT技術を積極的に活用し、さらなる効率化やサービス向上を目指します。AIやロボティクスも自治体単独で導入するのではなく、他の自治体と共同利用できるようにし、サービス品質の向上や割り勘効果によるコスト削減が期待できます。 |
スマート自治体は自治体クラウドから
スマート自治体のこれらの原則にはすべてICTテクノロジーが密接に関わっています。
これまで各自治体が独自に調達・開発・運用してきた行政アプリケーションやそれらのインフラをクラウド上で共同利用することにより、保有・維持することにかかる職員の事務負担やコストを削減し、効率化をはかることが期待されます。この「システムをクラウド上で共同利用する」インフラ・サービスを 「自治体クラウド」 と呼んでいます。
導入が進む自治体クラウド
自治体クラウドを導入する自治体は年々増加しています。
総務省は自治体のクラウド導入市区町村数の推移と目標を公開しており、最新の統計によると2019年時点で全国の約 68%(1,182 団体)がクラウド化を実施しています。
内容は、市区町村が単独で実施する「単独クラウド」と、2つ以上の団体が共同で実施する「自治体クラウド」で分類しており、2019年の時点では単独クラウドのほうが数が多い状況です。
「自治体クラウド導入団体を4年間で約2倍に」
2018年に閣議決定された「世界最先端デジタル国家創造宣言」では、クラウド導入団体の目標数1,600団体のうち共同利用形体の「自治体クラウド」の数が1,000団体に設定され、単独クラウドの数より多い状態となっています。 自治体クラウドの導入をさらに促進するため、地方財政措置(自治体情報システム構造改革推進事業)もとられており、さまざまなかたちでクラウドの共同利用やAI・ロボティクスのさらなる活用が進んでいくでしょう。
国内の自治体の多くが人口減少や高齢化をはじめとする問題や存続の危機に直面しています。
今回は「自治体クラウドとは」というタイトルで、自治体クラウドの背景・基本情報をおさらいしました。引き続きSIerの立場から自治体クラウドのトレンドや関連する情報発信をしてゆく予定です。
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