工場の製造ラインは昼夜を問わず稼働しており、各設備から様々なデータが収集されている。
これらは、製品の品質安定化、歩留まり向上、設備保全などに加え、新製品開発や製造プロセスの改善にも役立てられる。株式会社ユポ 戦略企画本部 デジタルソリューション部 プロダクショングループでマネージャーを務める俵寛生氏は次のように話す。
「各部門のスタッフは各種調査活動でデータを活用していますが、必要なデータを確認するため
に該当設備まで足を運ばなければならず、負担になっています。場合によっては別の担当者に
作業を依頼しなければならず、データの収集だけでも大変な時間と手間を要しています」
このように、人手に依存したデータ収集が、必要なデータの迅速かつ横断的な活用を妨げ、改善
活動を推進するうえで大きな障害となっていることが課題であった。
「そこで私たちは、必要なデータを必要なときにすぐ活用できる環境の実現に向けて、製造設備
専用のネットワークを構築し、既存の社内ネットワークと安全に接続させることを目指して、鹿島工場ネットワークの抜本的な見直しに着手しました。本プロジェクトでもATSの全面的な支援を受けています」(俵氏)
現行のネットワークインフラは保守・メンテナンスを繰り返しており、接続構成は管理されていたものの、個々の配線の使用状況までは把握できない状態となっていた。
俵氏は「ATSには、複数回にわたる現地調査によって、遊休配線や断線箇所を含むネットワーク
の実態を詳細に解明してもらえました」と話す。ATS はその調査結果をもとに、既存設備を有効
活用しながら、最適化されたネットワーク設計と必要最小限の機器構成を検討した。
「ATSの提案のポイントは、構築したネットワークが原因で製造設備が影響を受けないよう、既存の社内ネットワークとの間にセキュリティを担保する製品を配置するとともに、将来的に製造設備を簡単に追加接続できるよう余裕のあるネットワーク設計とする、というものでした」
鹿島工場のネットワーク最適化は幹線の敷設までが完了し、2026年度に入り製造設備の接続
プロジェクトが進められている。今後はデータに基づく改善活動がさらに加速していくことが期待される。
「鹿島工場DX」の各活動に2025年から伴走しているATS がMicrosoft Power Platform(Power Apps/Power Automate/Power BIなど)で手掛けたアプリは、DXアプリの新規開発と既存アプリのモダン化を含めすでに30本近くに達している。データ活用とDX 推進の基盤となる工場ネットワーク最適化プロジェクトも計画通り進行中だ。
「ATS のメンバーには、要件通りの仕事をこなすのではなく、要件の背景にある私たちの課題や
目標の理解に努めながら、常に高い熱量を持ってプロジェクトに臨んでもらえました。私たちが
示した難題に対しても、ただ『できません』でなく、『この方法なら可能です』と解決策を示して
もらえたので、何度も助けられました」と俵氏は振り返る。
「鹿島工場DX が、日本の多くの製造業におけるDX 活動の参考になれば」と話しつつ、山﨑氏は
次のように結んだ。
「製造と研究開発の中核拠点である鹿島工場のDX は、新たなビジネスコンセプト“Value Co-
Creator"の具現化を支えるとともに、三菱ケミカルグループの関係各社を含め日本の製造業で、
DX 活動を開始したばかりの現場が直面する課題に解決のヒントを示せるのではないかと考えて
います。ATS には、ITのスペシャリストとして引き続き私たちに寄り添った支援を期待しています」