VDI 環境のBCP 対策という要件には、HPE SimpliVityの強みである超高速バックアップ&リストア機能が活かされた。ATS ハイブリッドIT 事業部の河副は次のように話す。
「HPE SimpliVityの最大の売りは『秒速』と表現される超高速バックアップです。メタデータを利用したユニークな重複排除テクノロジーとハードウェアアクセラレーターを活用し、バックアップの劇的な高速化を実現します。本環境では、800ユーザー分のバックアップをわずか10分程度で行えます」
ATSの技術チームは、山善が利用するメインデータセンター内にHPE SimpliVityによる本番サービス用VDIシステムを構築するとともに、BCP 対策用のVDIシステムも準備した。
「本番サービス用のHPE SimpliVityで取得したバックアップを、BCP 対策用のHPE SimpliVityにコピーし、ネットワーク接続も含めて800ユーザー分のVDIサービスを安全に再起動する手順を確立しました。この構成では、メインサイトが被災した場合でも半日程度でサービス復旧が可能です」とATS ハイブリッドIT 事業部の横尾は自信を示す。
HPE SimpliVityでは、データ領域・システム領域を含めて仮想マシンを丸ごとバックアップ(イメージバックアップ)できるが、ここでも優れた重複排除・データ圧縮が威力を発揮する。
「800ユーザーの中でも所属部門ごとに利用するアプリケーションが異なります。この要求に応えるためにフルクローンによるVDI 展開を採用していますが、HPE SimpliVity が1/7程度までデータ量を削減してくれるおかげでストレージ容量を大幅に節約できています」と情報システム部インフラ課の戸嶋隆志氏は評価する。
仮に1ユーザーあたり50GBを割り当てると、800ユーザーでは40TBのストレージ容量が必要になるが、HPE SimpliVityによるVDI 環境ではこれが6TB 以内でまかなえる計算になる。
800ユーザーを対象に、HPE SimpliVityによるVDI 環境の本番運用を開始したのは2019年6月である。山善では東日本データセンターの準備を進めていたが、2020年に入って新型コロナウイルス感染症のリスクが高まると状況が一変した。情報システム部 インフラ課 課長の薄井大輔氏は次のように振り返る。
「コロナ禍への対応はまさにBCPの実践そのものでした。私たちは急遽、新たに300ユーザー分のVDI環境を整えました。事態が緊迫する中、大規模災害を見据えたBCP 対策のために準備したHPE SimpliVityをコロナ禍におけるBCP 対策用途へ振り替える決断をしたのです」
ATSの技術チームは迅速に対応し、実質作業としては1週間ほどでこの作業を完了させた。
「ハードウェアの転用は苦渋の決断でしたが、ビジネスを停滞させることなく難局を乗り切ることができたのは、HPE SimpliVityがノード追加で容易に拡張可能だったからこそ。ATS 様の迅速な対応にも感謝しています」と薄井氏は話す。
1,100ユーザーが使うオンプレミスVDI 環境は、安定した性能で山善のビジネスを支え続けている。システム運用は山善自身が行っているが、何らかの問題が発生したときはATSの監視センターと連携して迅速に対応するフローが整えられた。難易度の高い課題でも、システムを熟知したATSの技術チームが山善と連携しながら解決に取り組む体制が構築されている。
「DaaSからオンプレミスVDI に移行したことで、レスポンスを大きく改善できただけでなく、新規ユーザー環境の準備もタイムリーに行えるようになりました。やはり『自分たちでコントロールできる』ことは非常に重要です。これもATS 様による運用保守の支援があってこそ、と言えるでしょう」と薄井氏は笑顔を見せる。
ATSは、開発元の日本ヒューレット・パッカードより「HPE SimpliVityフォーカスパートナー」に認定されている。HPE SimpliVityの検証環境を自社に用意し、導入経験の豊富な技術チームによる構築・運用支援・保守サービスは評価が高い。山善のVDIシステムでは、ファームアップデートを含めた万全のサポートを提供している。
「ユーザー数が増えたことで運用が変わることもなく、バックアップ時間が伸長しているようにも感じません。気づいた時には正しくバックアップが取得されているという感覚です」と戸嶋氏はHPE SimpliVityの高速バックアップを評価する。
プロジェクトを振り返って小西氏は次のように話した。
「コロナ対策というBCPを先行させる形になりましたが、技術検証は万全に完了しており、東日本データセンターの準備が整い次第、大規模災害を見据えたHPE SimpliVityのBCP 運用を始められます。本プロジェクトは、震災などの災害に限らず、いかなる事態に直面しても、IT 環境が迅速かつ柔軟に対応できることの重要性を改めて確認する機会になりました。ATS 様には、今後もITパートナーとして私たちのビジネスを支えてくれることを期待しています」