DXと働き方改革を支える
富山県コミュニケーション基盤

2024年1月、富山県が「 DXと働き方改革 」を推進するための基盤システムの運用を開始した。
庁内コミュニケーションの円滑化、部局横断の情報共有 / ペーパーレス化、場所と時間を選ばない働き方への対応を実現し、業務のスピード化と生産性向上を通じて、県民本位の行政サービスを追求する『富山県コミュニケーション基盤』の誕生である。
北電情報システムサービス株式会社(HISS)とアルファテック・ソリューションズ株式会社(ATS)は、富山県の要件にきめ細やかに応えながら、豊富な知見を活かして Microsoft 365 の導入と県職員業務への定着化をサポートした。

富山県

県庁 富山県富山市新総曲輪1-7

本州の中央北部に位置する富山県の人口はおよそ100万。日本海と高い山々に囲まれており、県西部からは水深1,000m を
超える富山湾越しに3,000m 級の立山連峰を望むことができる。富山湾は「天然のいけす」と言われるほど海産物に恵まれて
いる。「くすりの富山」の伝統を受け継ぎ化学・医薬品工業が発達。機械、金属製品、電子部品、プラスチックなどを手掛ける
大手企業も多い。

お客様の課題
  • 「DX と働き方改革」を通じた業務のスピード化と生産性の向上、県民本位の行政サービスの実現
  • 庁内コミュニケーションの円滑化、部局横断の情報共有 / ペーパーレス化、場所と時間を選ばない働き方への対応
ソリューション

 

  • Microsoft 365を中心に、モダンな機能群を利用できる「富山県コミュニケーション基盤」を整備
  • 業務のスピード化と生産性の向上に寄与し、円滑なコミュニケーションの実現に貢献
導入成果


 

  • ビジネスチャットの活用、会議のオンライン化によりコミュニケーションを効率化
  • スケジュール管理ツールの標準化と情報共有により部局間の連携が容易に
  • PC およびスマートフォンから各種機能を利用し、時間と場所を選ばない働き方を実現
  • 県庁業務に欠かせないアドオン機能をローコードで開発・実装

富山県民の「ウェルビーイング」の実現へ

富山県は日本海と高い山々に囲まれており、その雄大な自然は富山に暮らす人々と産業に様々な恩恵をもたらしてきた。富山湾に生息する魚類はおよそ500種。日本海に分布する魚の6割以上を占め、一年を通して豊富な水産資源に恵まれている。産業面では、良質で低廉な水資源と水力発電が化学・医薬品をはじめ様々な工業を発達させてきた。
富山県知事政策局 デジタル化推進室 情報システム課 副主幹の森敏明氏は次のように話す。

「富山ブランドの魚や寿司は重要な観光資源でもありますが、おいしい食、豊かな自然と水、安全な土地という『幸せの基盤』が整っていること
が富山の大きな魅力です。富山県では、県民の『ウェルビーイング(自分らしく幸せに生きられること)』を成長戦略の中心に位置づけており、
その実現に向けて県民本位の行政サービスを追求しています」森氏が所属するデジタル化推進室では、「DXと働き方改革」を推進するための基盤整備に取り組んでおり、その一環として2024年1月に「富山県コミュニケーション基盤」の運用を開始した。

「最新のデジタル技術を活用し、県職員の業務のスピードと生産性を高めて、より良い行政サービスを提供していくための基盤システムを整
備しました。目指したのは、①庁内コミュニケーションの円滑化、②部局横断の情報共有 / ペーパーレス化、③場所と時間を選ばない働き方の実現です。私たちは、既存システムの延長でなく、職員の意識や組織の文化を変える起爆剤となるような新しい基盤を整備しようと考えました」
(森氏)

「富山県コミュニケーション基盤」の中核製品として採用されたのはMicrosoft 365。導入プロジェクトをリードしたのは HISS である。
同社 ITサービス部 IT 技術グループ 基盤 SI 第2チームの石川憲一氏は次のように話す。

「Active Directoryやメールシステムなど、富山県様での様々なシステム導入経験を活かしてプロジェクトに臨みました。Microsoft 365に精通した ATSと緊密に協力することで、10か月という限られた期間で5,000ユーザー規模のコミュニケーション基盤を完成させることができました」
富山県知事政策局 デジタル化推進室
情報システム課 電子県庁推進担当
副主幹 
森 敏明 氏
富山県知事政策局 デジタル化推進室
情報システム課 情報システム担当
主任 
石倉 誠司 氏
富山県知事政策局 デジタル化推進室
情報システム課 電子県庁推進担当
主任 
木村 直人 氏

北電情報システムサービス株式会社
ITサービス部 IT 技術グループ 基盤 SI 第2チーム
副課長 石川 憲一 氏

アルファテック・ソリューションズ株式会社
社会公共事業部 自治体文教技術部 技術グループ
リーダ 小嶋 孝夫 氏

5,000ユーザー規模のコミュニケーション基盤

富山県では、電子決裁や電子契約の推進、ペーパーレス化など業務のMicrosoft 365導入事例|富山県デジタル化に取り組んでおり、グループウェア、メール、チャットツールなども整備されてきた。だが、森氏らは「職員間の連絡は依然として電話が中心、他課の職員のスケジュールはわからず、メールは PC からしか利用できない」ことにジレンマを感じていたという。

「コロナ禍が深刻化した時期に、メール確認のために登庁しなければならなかった職員も少なくありません。Microsoft 365の導入を機に様々
な課題を一掃し、コミュニケーションの水準を全庁で一気に高めたいと考えました」と森氏は話す。

Microsoft 365は、SharePoint Online(庁内 ポータルサイト)、Teams(Web 会議・チャット)、Exchange Online / Outlook(メール、スケジュール管理)などが相互に連携し、PCやスマートフォンから手軽に利用できる。
これまで断片化していた各機能がシームレスに連携することで、ユーザーに新しい体験が生まれた。

「①庁内コミュニケーションの円滑化においては、庁内の電話連絡が Teams チャットに置き換わりつつあるのが大きな変化です。電話した相手が不在で伝言メモを書いたり、折り返し連絡をもらったときに自分が不在だったり、というような非効率はかなり解消されつつあると感じています。また、オンライン会議に招集されると Outlook のスケジュールに自動登録され、ワンクリックで Teams 会議に参加できるような体験もこれまでなかったものです」(森氏)

Teamsによる PC・スマートフォンからのチャット利用は着実に増えており、導入から半年が経過し直近では27万件 / 月に達しているという。さらに、富山県知事政策局 デジタル化推進室 情報システム課 情報システム担当 主任の石倉誠司氏が次のように続ける。

「②部局横断の情報共有 / ペーパーレス化では、全庁でのスケジュール管理ソフトを Outlook に統一するよう周知を進め、本庁ではかなり浸透
してきました。個人とグループのスケジュールが共有できるようになったことと、Teams を利用した簡易決裁や Web 会議の広がりが資料の電子化に結びついたことが大きいですね。Web 会議用のヘッドセットの希望者への配布も行いましたので、出先機関の職員が会議のために本庁に
参集する機会が減るなど、業務効率化とコスト削減の効果はさらに高まっていくでしょう」

そして、県職員が最も大きな変化を実感しているのは、③場所と時間を選ばない働き方である。職員が使う PC とスマートフォンは Microsoft Intuneで管理され、Microsoft 365などのクラウドサービスを場所と時間を選ばず安全に利用できるようになった。

「メール、チャット、スケジュールをスマートフォンから使えるようになったことで、業務のレスポンスが上がり、外出先から県庁に戻ってメールを確認するような非効率も解消されました。今後は、スマートフォンでのTeamsによるグループチャットやチャネルが積極活用され、特定のテーマや部局横断のプロジェクトチームなどでのコラボレーションが進むよう後押ししていきたいと考えています」(石倉氏)

県職員と業務への定着化をサポート

Microsoft 365が提供する機能の使いこなしがさらに進めば、職員、部局、 全庁レベルで様々な効果が期待できる。着実にかつスピード感をもって 「県職員と業務への定着化」を進めることが重要だ。HISS の石川氏は 次のように話す。

「新しいコミュニケーション基盤は、リアルな現場のニーズにもしっかりと 応えていかなければなりません。私たちは、Microsoft 365を業務に根付かせるための様々なアイディアを提供し、業務の効率化やより良い県民 サービスに寄与することを意識しながら、職員様のニーズの高い機能を作り込みました」

新システムの定着に向けて、HISSとATS が開発した機能やアドオン製品 には次のようなものがある。
 

  1.  職員情報(氏名 / 所属 / 連絡先 /メールアドレスなど)を一覧表示する機能をアドオン製品の
    「 Web 階層型アドレス帳(職員録)」で実装し、 メール / Teamsチャットとの連携を実現
  2.  Outlook の予定表を所属単位で一覧表示する機能をアドオン製品の 「グループスケジュール」で実装
  3.  共用車の予約システムを PowerApps によるローコード開発で実装し、 Outlookの予定表と連携
  4.  文書管理システム / 庶務事務システムの「決裁件数」を全庁ポータル (SharePoint)に表示する仕組みを構築し
     旧システムと同様の使い勝手を維持
  5.  庁内掲示板に記事投稿のメール通知 / 記事の予約投稿などの仕組み を Power Automateで実装し利便性を向上
  6.  スマートフォンの利用申請処理 を自動化するシステムを Power Automate で実装し運用負荷を軽減


システム設計・構築から、運用ルール策定、データ移行、研修・教育、運用 保守・ヘルプデスク、定着支援、アドオン開発まで ――
Microsoft 365 導入プロジェクトにおけるHISS とATS のタスクは広範に及んだ。ATS 社会公共事業部 自治体文教技術部 技術グループの小嶋孝夫氏は次のように話す。

「プロジェクトでは、ATS は SharePoint Online による庁内ポータルの再整備、Exchange Online の構築と移行を中心に担当しました。職員様の負担が大きいスケジュールデータの移行においては、Power Automate / 独自の移行ツールを活用して自動化の仕組みを用意し、のべ3,000名以上のデータ移行を実施しています」

アドオンを含む各機能がシームレスに連携

HISS と ATS は、自治体への Microsoft 365導入経験から得たノウハウを注ぎ込んだトレーニングを継続的に提供している。その内容は庁内ポータル(SharePoint)に格納され、動画コンテンツとしていつでも参照可能 だ。さらに、Outlook、SharePoint、Teams の 操作 マニュアル、Microsoft 365の操作全般を問い合わせられる AIチャットボット、具体的な利用シーンや活用法を記した運用マニュアルも整備された。

HISS の石川氏は、「機能の利用状況などの調査やアンケートを通じて、要所を捉えたトレーニングの実施やコンテンツの整備を進めています」と
話す。

「従来と使用感が変わって一部の機能が使われないような状況は、全体への普及の妨げになる可能性もあります。職員全員が新しいコミュニケーション基盤のメリットを実感し、思い通りに使いこなしていくには継続的なサポートが欠かせません。そうした意味でも、HISS と ATS の
きめ細やかな対応には非常に感謝しています」(森氏)

県民本位の行政サービスを支えるシステムへ

HISS と ATS が全面的にサポートした「富山県コミュニケーション基盤」は、職員一人ひとりの働き方を変え、チームや組織全体の生産性を高め、県職員の意識と行動にも変化を与えていくことになるだろう。森氏は次のように話す。

「これまで会議室の利用は承認制でしたが、Outlook から会議室予約が可能になったのを機に先着順に変えました。これは小さな例ですが、DX
と働き方改革でより大きな成果を生み出していくには、デジタル変革と一体化したルールや制度の見直しも必要と考えています」

富山県知事政策局 デジタル化推進室 情報システム課 電子県庁推進担当 主任の木村直人氏は、「 Microsoft 365導入における難題のひとつ Entra ID の変更作業も、HISS のサポートを受けることでスムーズに進めることができました。『富山県コミュニケーション基盤』の成功は、富山県のシステムに詳しい HISS と、Microsoft 365の機能に精通した ATS がワンチームとして対応してくれた成果だと思っています」と話す。

2024年1月1日に発生した能登半島地震は富山県にも大きな被害をもたらし、新しいコミュニケーション基盤の利用開始は2週間遅れることに
なった。森氏は当時を振り返りつつ次のように結んだ。

「その時点で利用可能だったチャットツールとクラウドストレージが災害対応で大きな役割を果たしたことで、私たちはデジタル技術の有効性を
改めて実感できました。新たに整備された『富山県コミュニケーション基盤』では、県職員全員がより迅速かつ適切に対応できるよう、HISS、ATSと相談しながらシステムの活用方法と対応手順を改善していく計画です。HISS と ATS には、富山県の『 DX と働き方改革 』を支えるこの
システムをフルに使いこなしていくために、引き続き適切なアドバイスとサポートを期待しています」
記載の会社名、団体名や製品名は各社の商標または登録商標です。
記載の内容は個別に明記された場合を除き2024年7月現在のものです。
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