従来の開発環境は、Hyper-Vによる仮想化基盤上に整備され長年にわたり運用されてきた。ATSはVM Essentialsによる新しい仮想化基盤を構築するとともに、Hyper-VからVM Essentialsへの安全な移行をサポートするなど、奈良部氏、村井氏らに寄り添ったサービスを提供した。ATS エンタープライズ事業部 技術部の横尾純平氏は次のように話す。
「私たちは、ATS社内に構築したVM Essentialsの検証環境を用いて、ニコン様が必要とする新旧ゲストOSが正常に稼働するかを確認していきました。既存環境ではハイパーバイザーのバージョンが2種類、仮想マシンのゲストOSが3種類稼働していましたので、計6パターンの仮想マシンに対して正常稼働を確認し、それぞれ新環境への安全な移行手順を確立しました」
VM Essentialsの管理ツールVME Managerは、他の仮想化ソフトウェアからの移行を自動化する機能を備えているが、この時点ではHyper-Vはサポート対象外だった。ATS エンタープライズ事業部 技術部の大坂祐輔氏は次のように話す。
「Hyper-VからVM Essentialsへの移行では、仮想ディスクのイメージ変換、VM Essentialsへの登録、必要なドライバー類のインストールなどが必要です。検証作業を通じて得られた知見を活かして、ニコン様の移行を万全にサポートしました」
横尾氏、大坂氏は、VM Essentials共同検証パートナープログラム内のコミュニティにおいて「VM Essentials Question Star Award」を受賞した、ATSにおけるVM Essentialsエキスパートチームのメンバーである。
「私たちはATSのサポートを受けながら、ATSが作成した手順書に沿って実際にいくつかの環境で移行手順を試しました。こうした作業を通じて、新しい仮想化基盤を私たち自身で運用していく上で欠かせない知見が得られたと思います」と村井氏は話す。
精機事業本部 FPD装置事業部では、VM EssentialsとHPEインフラ製品(HPE ProLiant DL360 Gen11サーバーおよびHPE MSA1060ストレージ)による仮想化基盤の構築を完了し移行作業を進めている。ATSはVM EssentialsとHPEインフラ製品に精通したSIerとしての実力を存分に発揮した。村井氏は次のように話す。
「私たちにとって『保守の一本化』も大きなメリットです。VM Essentialsソフトウェアから、サーバー、ストレージまで、開発元であるHPEから包括的な保守サービスが提供され、責任を持って問題解決に取り組んでもらえるため、安心して新環境を運用することができます」
奈良部氏も、「コストを抑えながら10年以上前のソフトウェア資産や開発環境を守る、という困難な要件に、試行錯誤を重ねながら最良の道筋をつけてくれたATSに感謝しています。私たちの目標を正しく理解して、課題解決に力を注いでくれるパートナーの大事さを改めて認識しました」と続けた。
ニコンが2026年5月に発表した「2026-2030年度中期経営計画」では、2030年度の売上収益1兆円、営業利益800億円という目標が掲げられた。中でも精機事業のビジネス成長にかかる期待は大きい。奈良部氏は次のように結んだ。
「FPD露光装置の根幹を支えるソフトウェア資産と開発基盤は、VM Essentialsによって安全に新しい環境へと継承されました。私たちはVM Essentialsを5年ライセンスで導入しましたが、さらにその先までFPD事業を支えてくれることを願っています。本番稼働を迎えるにあたり、ATSに期待することは『これまで通りサポートしてほしい』ということだけです。私たちはATSの仕事を信頼していますし、長年にわたる実績を高く評価しています」