Azure Stack HCI導入で得られるメリットを最大化するために、アルファテック・ソリューションズは 次のポイントに注力した。
「システム構成の大前提として、Azure Stack HCIでデータ主権を維持しつつ、クラウドと疎結合し多様なサービスを利用可能にすることを最重視しました。具体的には、Azureとのサービス 連携、障害予兆検知のクラウドサービスの適用、BCP対策としてのAzureオブジェクトストレージの活用などです」と同社 技術チームでプロジェクトマネージャーとして本プロジェクトを推進した 豊田武志は話す。
既存の仮想化基盤ではデータバックアップの不具合が発生していたが、Azure Stack HCIによる新システムはこの問題を解決するとともに、Azure上でのデータ保護を通じてBCP/DR対策も実現した。ここにもアルファテック・ソリューションズの知見が活かされている。同社 技術チームの倉内萌は次のように話す。
「Veeam Backup & Replicationを利用して、RPO/RTOの観点からローカルで1次バックアップを取得し、Azure Blob Storageへコピーする仕組みを整備しました。これによりデータ保護の確実性を高めるとともに、コストを抑えながら拠点災害発生時のデータ消失リスクを大幅に低減させています。Veeamは仮想化環境との親和性が高く、Azure Stack HCIとAzure間で仮想マシンとバックアップデータを自由に行き来させることができるだけでなく、様々なクラウドIaaS環境間の連携もサポートしています。この特徴を活かせば、より柔軟にハイブリッドクラウド環境を維持できると考えました」
Veeamは新システムへの移行でも活用された。豊田・倉内らは慎重に移行スケジュールを策定し、Veeamの「インスタントVMリカバリ」を利用して、VMware vSphereによる仮想化基盤で稼働する30システムをAzure Stack HCIに移行させていった。
バックアップ /リストアを用いる従来型の移行方法では、バックアップデータを本番環境にコピーする工程が復旧を大幅に遅らせる要因となる。
これに対して「インスタントVMリカバリ」は、バックアップ領域に保存されたVMデータを仮想基盤に直接登録することでシステムを再稼働できる。
もちろん、システム稼働後には業務影響なくバックグラウンドでバックアップデータが本番ストレージにコピーされる。「Veeamで取得したバックアップデータをHyper-V形式に変換し、Azure Stack HCI上でバックアップデータから直接仮想マシンを起動させていきました。これによりシステム停止時間を1仮想マシンあたり1時間以内に抑えつつ、着実にアプリケーションの再稼働を進めることができました」(倉内)
「移行作業は営業日を回避して週末に実施したのですが、週明けに業務が始まったとき、社員の誰一人としてシステムが切り替わったことに気づきませんでした。30システムすべてをノートラブルで移行させたことに、アルファテック・ソリューションズの技術力の高さを改めて実感させられました」と大塚氏は評価する。
運用面では、Windows Admin Centerを利用して、日常的な稼働監視や仮想マシンの作成などを容易に行えるようになった。
「直感的なGUIから操作できるため経験の少ないITスタッフでも扱えるようになり、システム運用の均質化が図られたことは大きな成果です。Azure Portalによるクラウドベースのモニタリングも段階的に進めています」(大塚氏)
豊田は、「システムの不調に際しては、アルファテック・ソリューションズが一次窓口として問題の切り分けを支援するとともに、必要に応じてハード/ソフトウェアベンダーへのエスカレーションを行うサポート体制を整えています」と続けた。
群栄化学工業がAzure Stack HCIによるハイブリッドクラウド環境の運用を開始しておよそ半年、システムのシンプル化、運用の平易化、ビジネスアジリティの強化、データ保護とBCP/DR対策といった目標はすべて達成されたが、すでに次のチャレンジも始まっている。
「生成 AIに象徴される技術革新が驚くべき勢いで進んでいく中、Azure Stack HCIの導入によって、私たちが巨大な進化の流れに乗ることができたのは間違いありません。Azureサービスとクラウドテクノロジーの枠組みの中で、私たちは着実にそのメリットを享受できる環境を手に入れたのです。買い切りライセンスによる従来型のシステムでは、減価償却が終わる5年後まで新しいテクノロジーを利用できず、競争力を低下させかねなかったでしょう」と大塚氏は話す。
群栄化学工業では、DXを加速させるモダンなアプリケーションの開発が進み、コンテナ技術の採用や複数のパブリッククラウドの使い分けも始まっている。「次のテーマは、Azure Arcによるハイブリッド/マルチクラウド環境の統合管理の実現」と大塚氏は力を込める。
大塚氏をサポートする形で、アルファテック・ソリューションズのメンバーが強力なチーム編成でプロジェクトに臨んだことが大きな成功要因となった。和田氏は「私たちが認識していた課題だけでなく潜在的な問題点までも探り当て、その解決方法とあるべき姿を示し、圧倒的な熱量をもって実際にそれを具現化してくれた」と話しつつ次のように結んだ。
「チームの熱量の高さとそれを支える確かな技術力を常に感じながら、安心してプロジェクトを任せることができました。アルファテック・ソリューションズには、これからも私たちのIT環境とビジネスを支える力強いサポートを期待しています」