
自社システムにマッチするUPS製品の選び方は?
前回のブログで紹介したシュナイダーエレクトリックの無停電電源装置(UPS)には、導入企業の用途やシステム規模などに応じた多種多様な製品群が用意されています。その中から最適な製品を選ぶにはどうすればいいのでしょう?まずは基礎知識として、UPSの運転方式の違いからお伝えしましょう。
高い要求基準に応える常時インバーター方式
多彩な製品を揃えるシュナイダーエレクトリックのUPSの中でも、特にお勧めしたいのがSRTシリーズ、SMTシリーズ、SMXシリーズの3シリーズです。
サーバールームやデータセンターなどでの使用に適したSRTシリーズのUPSでは「常時インバーター方式」を採用しています。この方式では、通常運用時は商用電源の交流を一度整流器(コンバーター)で直流に変換した上でバッテリーに充電しながら、さらにインバーターを通して整えた正弦波の交流に再変換して出力し給電します。もし停電が発生した場合にはバッテリー稼働に切り替わり、インバーターを経由して交流を出力します。
常にインバーターを経由する仕組みにすることで、停電発生時の電源切り替え時間をゼロにできます。このため、SRTシリーズのUPSは電力の瞬断が許されない、ミッションクリティカルな情報システムのバックアップ電源として最適です。さらに、インバーターで交流の波形を整えることで、雷サージやノイズに対する保護能力が極めて高い点が特徴です。
ただし、後述する「ラインインタラクティブ方式」よりも複雑な回路を組み込むため、製品価格としては高めになります。また、インバーターを通す工程で変換ロスが発生するため、電力コストも比較的高くなります。
運用コストを抑えるラインインタラクティブ運転方式
中小規模システム向けのSMT/SMXシリーズのUPSでは「ラインインタラクティブ方式」を採用しています。この方式では、通常は商用電源の交流にサージ保護回路とノイズフィルターを通して雷サージとノイズを除去した上で、交流電源をそのまま出力します。給電と並行してバッテリーに充電もします。
除去できない強い電流波形の乱れを検知すると、停電と判断しバッテリーからの給電に切り替わり、インバーターを介して交流を出力します。この電源切り替えに要する時間は5~10ミリ秒で、ミッションクリティカルな用途以外の情報システムであれば十分に対応できるスペックと言えるでしょう。
SMT/SMXシリーズは自動電圧調整(AVR)機能も備えており、多少の電圧変動ならバッテリー給電に切り替えずに対応します。この仕組みにより常時インバーター方式と比べて電力変換ロスを抑えられるため、電源が安定している環境では電力コストを抑えられるメリットがあります。省エネルギー指向の中小企業やSOHO(Small Office Home Office)での使用に適している製品でしょう。
容量やバックアップ時間を計算して製品を選択
続いて、製品選択のステップを具体的に説明していきます。
まずは、UPSの電源容量を見積もるために、社内で電源をバックアップしたい機器をリストアップして、各機器の皮相電力(単位:VA)の合計を計算しましょう。皮相電力とは電源が供給する電力の総量を示す指標で、各機器の仕様書に記載されている平均消費電力(W)を一般的な力率(0.8)で割ることで簡易的に概算を算出できます。全ての機器の皮相電力の和を出力できる容量がUPSに必要になりますが、将来の拡張などを考慮して2割程度多めに見積もっておくのがお勧めです。
次にバックアップする機器の入力電圧(100V、200V)と電源プラグのタイプを確認して、対応するUPSを選びます。電源プラグは一般的に、単相100Vの機器では「NEMA 5-15P」タイプが、単相200Vの機器では「NEMA L6-20P」タイプが使われます。設置形態の違いによって、タワー型とラックマウント型のタイプがありますので、自社の環境に合う製品を選んでください。
最後に必要なバックアップ時間を検討します。停電時にデータの保存だけでも終えたいという場合は、数分から10分程度が必要となります。一方、停電時でも一定時間業務を継続したい場合は、拡張(増設)バッテリー対応モデルを検討してください。 SRT/SMXシリーズは、最大10台までバッテリー増設が可能です。接続機器の消費電力にもよりますが、バックアップ時間を数時間単位で延長することもできます。
これらの要素を検討して最適なUPS製品を選んでいきます。判断が難しい場合はシュナイダーエレクトリックの公式サイトにある「UPS選定ツール」に条件を入力すると、最適なモデルを提案してくれますので、試してみてください。
安全な自動シャットダウンが可能な管理機能を用意
シュナイダーエレクトリックのUPSは、情報システム担当者の業務負荷を軽減できる遠隔管理機能が充実している点も特徴です。今回のブログでご紹介しているSRT/SMT/SMXシリーズUPSでは、停電時に接続機器を安全に自動シャットダウンする機能を有する、主に2つの電源管理用ソフトウェアを有償で提供しています。
※RS/BK/ESシリーズUPS用(BE425M-JPを除く)に「PowerChute Serial Shutdown for personal」を無償で提供しています。
※UPSによってPowerChuteの対応状況が異なりますので、詳しくはPowerChute対応表をご確認ください。
SRT/SMT/SMXシリーズUPSで利用可能な電源管理用ソフトウェアは、UPSとUSB接続あるいはシリアル接続したサーバーやパソコンなどの自動シャットダウンが可能な「PowerChute Serial Shutdown for Business」と、LAN経由で接続した複数のサーバー、仮想マシン、パソコンなどの自動シャットダウンが可能な「PowerChute Network Shutdown」です。「PowerChute Network Shutdown」を利用する際は、「ネットワークマネジメントカード」(NMC)を別途用意する必要があります。ただし、5000VA以上のUPSにはNMCは標準装備されています。
これらの遠隔管理ソフトでは、UPSの重要な状況変化をメールで自動通知してくれる便利な機能も提供しています。例えば、停電の発生時にバッテリーモードに切り替わったことや電源が復旧して通常モードに戻ったこと、停電時に自動処理される機器のシャットダウンの開始などを通知してくれます。バッテリー交換のタイミングやUPSの温度異常などの通知もあり、日々の運用をサポートしてくれます。
UPSの操作や設定を遠隔から指示することも可能です。あらかじめ設定したスケジュールでUPSを自動オン/オフしたり、停電やバッテリー残量低下などのイベント発生に応じて、シャットダウンやバックアッププログラムの起動などを自動化したりすることもできます。
リチウムイオン電池やリサイクル強化で環境に配慮
シュナイダーエレクトリックは、UPSメーカーとしての社会的責任を果たすという観点から、サステナビリティ(持続可能性)に配慮した多くの施策に取り組んでいます。
従来のUPSでは、低コストでリサイクル率が高いという理由から鉛蓄電池が広く使われていました。しかし、シュナイダーエレクトリックは2013年にリチウムイオン電池を採用し、2020年以降はUPS筐体の奥行きをコンパクト化しやすい「Smart-UPSリチウムイオン」搭載モデルを展開し、採用を拡大しています。リチウムイオン電池は鉛蓄電池より小型化・軽量化が容易で、寿命が最大10年と長いため、廃棄物の削減により環境負荷を抑える効果も期待できます。
さらに、ユーザーが廃棄する使用済みバッテリーを無償で回収(送料はユーザー負担)したリサイクルを促進しています。2025年1月からは、UPS本体やバッテリーに加えて、サーバールームやデータセンターで廃棄するラックやケーブル、アクセサリーなど使用済みの周辺機器まで一括して回収するサービスを開始しており、日本での回収拠点も1カ所から8カ所に拡大しました。こうした環境に配慮したシュナイダーエレクトリックのUPSを採用することは、環境意識が高い企業として認知され、ブランドイメージや価値向上にもつながるでしょう。
アルファテック・ソリューションズは、シュナイダーエレクトリック製UPSの正規販売代理店として、お客様が抱える製品選択や最適なシステム設計のお悩みに対応しています。UPSの導入やリプレイスをご検討の方はお気軽にお問い合わせください。