HCIソリューションとUPSで仮想環境を安心安全に構築・運用、仮想化によるコストダウンと停電トラブル対策のススメ

HCIソリューションとUPSで仮想環境を安心安全に構築・運用、仮想化によるコストダウンと停電トラブル対策のススメ

サーバー仮想化では停電リスクへの備えが不可欠

 サーバーやストレージ、パソコンのデスクトップ環境などのハードウェアを有効利用できる仮想化技術が企業に広く普及しました。

 しかし、仮想化を使っていることで、停電や自然災害などにより企業に生じる損害が高まるリスクもあります。複数の業務システムを1台の物理サーバーで運用することで、停電による一時的なシステムダウンやデータの破損、長期的な業務停止へエスカレートするケースがあり得るからです。

 さらに、停電からの復帰時に流れる過電流(サージ)による物理サーバーの故障や、セキュリティ関連システムの停止による情報漏えいの恐れもあります。これらのトラブルが集中することで、仮想化していない場合よりもサーバーのダウンタイムが長期化する可能性があります。

サーバー仮想化では停電リスクへの備えが不可欠_リスクへの備え

 こうしたリスクに備えて必要になるのが、停電時に仮想化した物理サーバーへ電源を供給する「無停電電源装置」(UPS)です。仮想化サーバーにUPSを接続することで、万一の停電時にも安全なデータ保存とシャットダウンをするための時間の確保が可能になります。つまり、損害の拡大を防ぐには、事前準備とシステムの冗長化がカギとなる訳です。

 例えば、クラウドサービス上に仮想化環境を移行している最中に運悪く停電に遭ったとしても、社内サーバーにUPSが接続されていれば安全に移行作業を中断できます。このように、UPSを組み合わせることで、サーバー仮想化のメリットを安全に享受できるようになります。

VMwareの価格高騰で代替製品への移行検討が進行中

 日本企業が主に使用している仮想化基盤のアーキテクチャーの1つが、ハードウェアとソフトウェアを統合する「ハイパーコンバージド・インフラストラクチャー」(HCI)です。仮想化する物理サーバーにおいて基盤ソフトウェアである「ハイパーバイザー」を動作させ、コンピュート、ストレージ、ネットワークを仮想化します。

 従来は旧VMwareを活用した仮想化が主流でしたが、2023年のBroadcomによる買収後にライセンス価格が高騰したため、最近は代替製品への移行の検討が進んでいます。弊社では、マイクロソフト、Nutanix、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)のHCIソリューションを主に扱っています。

関連情報:アルファテック・ソリューションズのサーバー仮想化・HCIソリューション

 マイクロソフトの「Azure Local」は、同社のクラウドサービス「Microsoft Azure」と統合した仮想化環境の構築に最適なHCIソリューションです。ハイパーバイザーを搭載したローカルの物理サーバーで、Azureが提供する仮想マシンやコンテナ(アプリケーション単位の軽量な仮想化)などの処理機能を実行できます。

 マルチクラウド管理サービス「Azure Arc」を使って、クラウド経由で自社サーバーを一元管理することも可能です。事前に検証したベンダーの物理サーバー(1台が1ノード)を用いてHCIを構成し、最小で2ノードから導入できます。クラウド(Azure)との連携をベースにしているため、クラウド環境から一部サービスをオンプレミスに戻す用途にも最適です。Windowsサーバーのライセンスを活用できますが、Azureのサブスクリプション契約が必須となります。

低額からスタートできるNutanix、HPEのHCI製品

 続いて、HCIソリューション技術の先駆者的企業である米Nutanixが提供する「Nutanix Cloud Platform」(NCP)を紹介します。同製品は、物理サーバー(標準3ノード)でサーバー、ネットワーク、ストレージの仮想化が可能で、必要に応じてノードを追加すれば仮想化リソースを拡張することもできます。純正ハードウェアがあり、さらにDell、HPE、Lenovoでのサーバーでも動作するので、初期投資を抑えつつ、スモールスタートから成長に合わせて段階的に規模を拡大できます。ハイパーバイザーとしてVMwareとマイクロソフトの製品にも対応しますが、同社製の「AHV」を使えばライセンス費用が不要となり仮想化コストを削減できます。

 NCPには、利用する機能に応じた多様なライセンス体系があります。中でも「NCIライセンス」は仮想化基盤の構築に必要なすべての機能が含まれており、VMwareからの移行(ツールあり)やクラウド環境を利用する場合に最適です。Nutanixの統合管理ツール「Prism」はGUIベースで、仮想マシン、ストレージ、ネットワークなどのリソースを一元管理できます。直感的なワンクリック操作で仮想マシンの作成、ノード追加、アップデートなどを実行できるため、IT部門の運用負荷を大幅に軽減できます。

 HPEのHCIソリューションとしては、「HPE SimpliVity」と2025年1月に発売した「HPE Morpheus VM Essentials Software」(HVM)の2製品を取り扱っています。HPE SimpliVityは世界標準サーバーとして評価の高い「HPE ProLiant」をベースとし、CPU、メモリー、ストレージ、仮想マシンなどの障害を機械学習で予測分析する「HPE InfoSight」機能の搭載による安定稼働が魅力の製品です。加えて、保存データの重複排除と圧縮機能によりストレージの使用量を削減することで、バックアップ/リストアに要する時間を削減できます。最小構成で2ノードのスモールスタートから拡張でき、既存のx86サーバーもノードとして追加できます。

低額からスタートできるNutanix、HPEのHCI製品

 新製品のHVMは安価な価格設定が特徴です。コア数が大きい高速CPUの物理サーバーを使うと料金が高くなるVMwareに対して、基本的にサーバー台数に比例するCPUソケット数に応じた価格体系を採用しています。また、Linuxベースでオープンソースの「KVM」をハイパーバイザーとして採用しており、ベンダーロックインのリスクがありません。

 マルチクラウド、マルチベンダーに対応した統合管理ツール「Morpheus」を備え、仮想マシンを止めずに異なる物理サーバー上に移動させる「vMotion」、物理サーバーの障害時に仮想マシンを自動的に他のサーバーへ移して起動する「HA」などの機能を搭載しています。さらに、既存のVMwareシステムからのマイグレーション機能も備えています。

HCIとUPSの組み合わせで安定運用を

 これらのHCI環境にUPSを組み合わせることで、停電時のトラブル拡大を心配することなく安心して業務に専念できます。弊社で扱うUPS製品の提供元であるシュナイダーエレクトリック社は、40年以上の電源保護ソリューションの提供実績を持ち、ミッションクリティカルな環境での高い信頼性に定評があります。

 シュナイダーエレクトリック社のUPSは遠隔管理機能が充実している点が特徴で、ネットワーク経由でUPSを監視・管理するための拡張カード「ネットワークマネジメントカード」(NMC)と遠隔管理ソフト「PowerChute Network Shutdown」(PCNS)を採用することで、LAN経由で接続した複数のサーバー、仮想マシン、パソコンなどの自動シャットダウンが可能になります。

 弊社が扱うHCI製品のデータ保護機能はすべて、シュナイダーエレクトリック社のUPSとの連携に対応しています。停電時におけるデータの安全移行や確実な復旧によって、データ損失のリスクを回避できる可能性を高めることができます。

 次回のブログでは、PCNSの機能詳細や、HPEのVMEとUPSを組み合わせる場合の設定手順などを紹介します。

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