田辺三菱製薬様

Nutanix+HPE GreenLakeにより
オンプレミスにクラウド体験を創造

田辺三菱製薬株式会社が、全社レベルでシステムのモダン化とクラウドリフト/シフトを加速させている。「クラウドファースト」を基本としつつ、移行期間におけるハイブリッドクラウド環境をいかに最適化するか――この難題に挑む同社が選択したのは「月額費用モデルによる仮想化基盤導入」である。アルファテック・ソリューションズ(ATS)は「Nutanix+HPE GreenLake」の提供を通じて、研究開発型創薬企業としての成長戦略を支える「創薬系仮想化基盤」の最新化プロジェクトで中心的な役割を果たしている。

田辺三菱製薬株式会社

本社 大阪市中央区道修町3-2-10

1678年に大阪の道修町で「たなべや薬」の製造販売業を開始。以来、日本の医薬品産業発祥の地である道修町に本社を置き、MISSION「病と向き合うすべての人に、希望ある選択肢を。」を掲げ、医療用医薬品を中心とする革新的な医薬品の創製を通じて広く社会に貢献している。

https://www.mt-pharma.co.jp/

お客様の課題
  • パブリッククラウドへの即時の移行が困難なアプリケーションへの対応
  • 「創薬系仮想化基盤」の新設とデータセンター移行
ソリューション

 

  • ハイパーコンバージドインフラNutanixによる容易に拡張可能な仮想化基盤の整備
  • HPE GreenLakeによる「月額費用モデル」でのインフラ導入
導入成果

 

  • 使い勝手から費用処理まで、モダンなクラウド体験をオンプレミス環境で実現
  • アプリケーション開発計画に合わせたインフラの「ビルディングブロック&月額定額化」で先行投資を抑制
  • VMwareからNutanixへのテクノロジー移行、インフラおよびデータセンター移行を安全に実施
  • 無償の移行ツールとハイパーバイザーの利用により全70システムの移行コストを抑制
  • 製薬業界のシステム構築・運用に欠かせない「バリデーション」に万全に対応

クラウド移行が困難な「創薬系システム」

田辺三菱製薬の創業は1678年、その歴史は340年以上に及ぶ。グローバルに展開する研究開発型創薬企業へと成長・進化を遂げた現在、同社が掲げるMISSIONは『病と向き合うすべての人に、希望ある選択肢を。』である。田辺三菱製薬は、適切な医療を適切なタイミングで適切な患者に届ける「プレシジョンメディシン」、治療薬を起点に予防から予後までサポートする「アラウンドピルソリューション」の2軸での事業戦略を推進している。ITデジタル本部 ITデジタル部の高橋将光氏は次のように話す。

「田辺三菱製薬は、2025年12月1日に『田辺ファーマ株式会社』へ社名を変更します。新社名には、研究開発型創薬企業としていっそうグローバルに発展する強い意思が込められています。中枢神経、免疫炎症、糖尿病・腎領域、がん領域を中心とする医療用医薬品の強みを活かしながら、持続的な成長とグローバル展開を加速させるために、研究開発力の強化にいっそう力を注いでいきます」

新薬が世に出るまでには、膨大な基礎研究の積み重ねから、薬効・安全性評価、臨床試験、承認申請・審査などを経て製造・販売に至る長いプロセスがある。田辺三菱製薬では、特に重要な「創薬フェーズ」を支援するシステムを拡充しながら研究開発を加速させている。

「全社方針としてパブリッククラウドへのリフト/シフトを推進しており、用途が縮小するデータセンターは2026年末までに撤廃する計画です。研究開発を支える『創薬系システム』もフルクラウド化を目指していきますが、そこに至るにはアプリケーションの改修やモダン化、バリデーションへの対応、ソフトウェアライセンスの適正化など、多大な作業を伴う課題を乗り越える必要がありました」と高橋氏は話す。

これらの課題を一掃するには数年を要することは明らかだった。

「私たちは、即時のクラウド移行が困難なおよそ70のアプリケーションを選別し、これらをオンプレミスに新設する『創薬系仮想化基盤』に集約することを決断しました。データセンターの撤廃までに移行を完了させることが最重要のミッションです」(高橋氏)

アルファテック・ソリューションズ(ATS)は、この「創薬系仮想化基盤」の設計・構築・移行プロジェクトにおいて中心的な役割を果たしている。ATSの提案は、「Nutanix+HPE GreenLake」によるインフラの「ビルディングブロック&月額定額化」という独創的なものだった。
田辺三菱製薬株式会社
ITデジタル本部
ITデジタル部
高橋 将光 氏
アルファテック・ソリューションズ株式会社
エンタープライズ事業部
技術部
部長 小林 憲到 氏
アルファテック・ソリューションズ株式会社
エンタープライズ事業部
技術部
第3技術グループ 第1チーム
根本 隆作 氏

「月額定額モデル」での仮想化基盤導入

新たな「創薬系仮想化基盤」の構築にあたって、高橋氏はATSと議論を重ね、様々な可能性やリスクを慎重に洗い出しながら基本方針を練り上げていった。全社がクラウドへのリフト/シフトを進める中、「従来と変わらないオンプレミス仮想化基盤」を構築することは許されない。プロジェクトに携わったATS エンタープライズ事業部 技術部 部長の小林憲到氏は次のように話す。

「私たちが着目したのは、数年間にわたる創薬系アプリケーションの改修計画です。改修を完了したアプリケーションから順次『創薬系仮想化基盤』に集約するならば、初期段階で70VMを稼働させるインフラリソースは必要ありません。まず必要最小限のリソースで導入し、必要なタイミングで必要なだけリソースを拡張できるハイパーコンバージドインフラ製品Nutanix(Nutanix Enterprise Cloud OSを統合したアプライアンスHPE ProLiant DX)を採用し『創薬系仮想化基盤』を構築します」

この「ビルディングブロック方式のインフラ構築」により大きな価値をもたらすために、ATSが提案したのがHPE GreenLakeだった。HPE GreenLakeでは、システムを構成するハードウェアとソフトウェアに加え、構築や運用にかかる各種サービスを包括的に「月額費用化」できる。

「完成時4階建て70戸のマンションをイメージしてください。アプリケーションの改修計画に合わせて、1階から4階まで、Nutanixノードの増築単位でHPE GreenLakeを適用していくことがポイントです。HPE GreenLakeの『月額定額モデル』を採用し、最初のNutanix導入を親契約として、ノード追加ごとに子契約を積み増していくことで先行投資を抑制し、『創薬系仮想化基盤』のライフサイクル全体でコストを最適化します」と小林氏は力を込める。

高橋氏は、「4階建て70戸のマンションの完成を前提にすることなく、ビジネス要求の変化に応じて3階で止めることも、5階まで増築することも、適切なタイミングで柔軟にプランを選べることを高く評価しました。また経営視点では、田辺三菱製薬自身がインフラ資産を保有する必要がないことも重要です」と続けた。

既存環境 からNutanixへの安全な移行

 既存データセンターの3Tier仮想化基盤から、別サイトに新設されたNutanix/HPE ProLiant DXによる「創薬系仮想化基盤」への移行はオンラインで安全に実施された。その手順について、ATS エンタープライズ事業部 技術部の根本隆作氏は次のように説明する。

 

「ATSで豊富な実績のある『Nutanix Move』を活用して、ハイパーバイザーの移行、インフラ移行、データセンター移行を同時に実行しました。まず仮想マシン単位で新旧環境をオンライン同期させ、同期が完了した時点で新システムに切り替えるシンプルな手順です」

 

Nutanix Moveでは、異なるハイパーバイザーからNutanix AHVに移行するに際して、必要な変換処理を自動的に実行できる。

 

「オンラインでの同期・移行にあたっては、WAN帯域の確保や実施スケジュールの調整、アプリケーションチームとの連携に慎重を期しました。結果として、VMwareからNutanixという異なるテクノロジー間での変換・移行をスムーズに進めることができました。VMwareのライセンス体系変更に伴う諸問題も回避できる見通しです」と高橋氏は話す。

 

異なるハイパーバイザー間での安全な移行手順が確立されているNutanix/HPE ProLiant DXは、オンプレミス/ハイブリッド環境における理想的な選択肢として市場での認知が固まりつつある。

 

「移行先のNutanix AHVやNutanix Moveを無償で利用でき、ベンダー変更に要するコストを抑制できたこともポイントです。計画通り移行を完了しデータセンターを撤廃できれば、目標通りのコスト削減を達成できるでしょう」(高橋氏)

 

製薬業界ならではの「バリデーション」への対応

製薬業界では、GMP(Good Manufacturing Practice)やGCP(Good Clinical Practice)などの「GxP規則」に従い、システムが適切に動作することを証明(バリデーション)することが法令により定められている。ATSの小林氏は次のように話す。

 

「創薬系仮想化基盤の構築にあたっては、データの改ざん防止、監査証跡の記録、個人認証、システムの文書化などを規定した『21 CFR Part11』への対応が必須でした。ATSでは、本プロジェクトを通じてバリデーション対応の重要性・有用性を改めて認識し、プロジェクトチームを中心に知見の獲得を進めるとともに、その後は経営層の合意のもと全社で均質なバリデーション対応が可能な体制を整えています」

 

本プロジェクトは第4期までのシステム増築を終え、2026年末のデータセンター撤廃を目指して計画通り進んでいる。高橋氏はプロジェクトが順調に進められている要因を次のように分析する。

 

「インフラ領域の専門家であるATSが、バリデーション対応やアプリケーション領域の課題など、良い意味で自社の業務範囲を越えて対応してくれたことが大きな成功要因だと思います。会社間の壁を意識させず、『ひとつのプロジェクト』として目標に向かって取り組んでもらえたことに感謝しています」

 

田辺三菱製薬は、2025年12月1日より田辺ファーマとして生まれ変わる。研究開発型創薬企業として更なるグローバルでの発展に向けたチャレンジは続く。高橋氏は次のように結んだ。

 

「NutanixとHPE GreenLakeを組み合わせるATSの提案は、『クラウドへの橋渡し』を担うモダンな創薬系仮想化基盤を実現するとともに、『ハイブリッド環境のひとつの理想形』を具現化するものでした。オンプレミスの重要データはクラウド上で保護され、ハイブリッド環境でBCP対策が強化されたことも成果のひとつです。これからもATSには、創薬系仮想化基盤にとどまらず、より幅広い領域で私たちをサポートしてもらえることを期待します」

本資料に記載の会社名、団体名や製品名は各社の商標または登録商標です。
記載事項は個別に明記された場合を除き2025年11月現在のものです。
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